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2025年10月19日日曜日

フィールドレコーディングの魅力


こんにちは、poco moonです。今日のテーマは「フィールドレコーディングの魅力」です。私の曲には、風や波、鳥の声など、さまざまな“環境音”がそっと混ざっています。

アンビエントやエレクトロニカを作る中で、こうした音は、メロディやリズムと同じくらい大切な要素です。音楽が生まれる場所の空気や時間までも、一緒に閉じ込めたい。そんな気持ちで、私は旅先で録音をしています。


🔸 どんな音を録るのが好きか

旅先では、つい耳を澄ませたくなる瞬間があります。波が岩に当たる音、森を抜ける風の音、川がゆっくり流れる音……。そうした“風景の中の音”を見つけたとき、録音機をそっと取り出します。

海辺でマイクを構えると、砂の上を歩く足音や遠くのカモメの鳴き声まで聞こえてくる。そのたびに「この音は、どんな曲と出会うんだろう」と想像がふくらみます。


🔸 フィールドレコーディングの工夫

録音には ZOOMのH4nH1n の2種類を使っています。以前はH4nでしっかり録っていましたが、最近は一眼レフで写真も撮るので、機材を軽くしたくてH1nを使うことが多くなりました。

いちばん難しいのは、人の声が入らない環境を見つけること。人通りの少ない時間帯や場所を探し、静かになった瞬間を待ってマイクをセッティングします。

5〜10分ほどの収録ですが、風の向きや波のリズムなど、思うように録れないことも多い。それでも、うまくいったときの音には、その場所の空気がまるごと写っているようでうれしくなります。


🔸 加工の仕方と仕上げ

録った環境音は、DAWに取り込んでから軽く整えます。基本的には 低音をカット して、ノイズを減らす程度。自然の音は加工しすぎると“生きた感じ”が失われてしまうので、なるべくそのままの息づかいを残すようにしています。

音を重ねるときは、主張しすぎず、曲の背景に溶け込むように配置。シンセやピアノの後ろでそっと流れているだけでも、その音があるとないとでは、曲の深呼吸の仕方がまるで違って感じます。


🔸 楽曲での使い方

たとえば「Beautiful Coast」では、伊豆の浮島海岸で収録した波の音を使いました。夕方の時間帯で人の往来も少なく、柔らかな潮騒がヒーリングサウンドとよく馴染みました。

一方「Precious Time」では、ガットギターの音に風や鳥の声を加えています。こちらは人が多い公園で録音したため、遠くに人の話し声がかすかに入っています。でもその“にぎやかさ”が不思議と曲の温かさを引き立ててくれて、結果的にちょうどいい“生活の音”になりました。


🔸 自然と音楽のあいだで

環境音を加えると、音楽がより身近に感じられるようになります。まるで、日常の中に自然が静かに寄り添ってくれるような印象。人工的なサウンドの中にも、どこか“現実の時間”が流れ出す気がするのです。

私にとってフィールドレコーディングは、単なる素材集めではなく、風景と心をつなぐ小さな旅。これからも耳を澄ませながら、音の中にある景色を探していきたいと思っています。