こんにちは、poco moonです。
今日のテーマは「BGMを作るときに意識している“聴かせない音楽”」です。
音楽というと、「人に聴かせるもの」というイメージが強いかもしれません。けれど、BGM(バックグラウンドミュージック)では“聴かせすぎない”ことがとても大切だと感じています。
BGMの多くには、音楽以外の「主役」が存在します。たとえば映像作品の中では映像が主役ですし、店舗や空間演出の場では、人や雰囲気そのものが主役になります。音楽はそれらを“引き立てる”役割を担う、それがBGMの本質だと思っています。
最近は特に、映像とともに流れるBGMの需要が増えています。カフェ、レストラン、ギャラリー、アパレルショップ、美容室など、様々な業態の雰囲気に合わせた音が求められています。音楽が主張しすぎると空間の印象を壊してしまう。だからこそ「聴かせない」音作りが必要です。
メロディは“語りすぎない”
BGM制作で最も重要な鍵になるのは、やはり“メロディ”です。
歌もののように強く主張するメロディラインを入れてしまうと、聴く人の意識が音楽のほうへ向かってしまいます。
私は、メロディをできるだけ詰め込みすぎず、音と音の“間”に余白を残すようにしています。間隔を開けることで、空気が流れるような感覚が生まれるんです。
その代わりに、コード進行で物語を感じさせるようにしています。セブンスコードやテンションコードを使って、さりげなく感情をにじませる、そんなアプローチが好きです。
BGMでは、派手な展開よりも「空間と調和するメロディ」が美しく響くと思います。
空間をデザインする音作り
リバーブやディレイも、BGM制作に欠かせない要素です。
これらのエフェクトを使うことで、音に“居場所”が生まれます。
私は曲ごとにリバーブの深さを意識的に変えています。たとえば、静かな夜のシーンをイメージした曲では、リバーブを広げて奥行きを感じさせたり、ディレイを少し長めに設定して、音が残る余韻を大切にしています。
空間的な広がりを作ることで、音に余裕が生まれ、聴く人が自然とリラックスできる。まるで音そのものが“呼吸”しているような状態を目指しています。
さりげなく個性を込める
「聴かせない音楽」とはいえ、自分の個性や感情を閉じ込めてしまうわけではありません。
映像や空間を引き立てながらも、その中に自分のメッセージをそっと忍ばせる。
たとえば、和の情景を感じさせるようなメロディの抑揚だったり、ピアノやパッドの音色の柔らかさに自分らしさを込めたり。BGMという控えめな世界の中でも、表現できることはたくさんあります。
聴く人が「なんだか心地いいな」「優しい雰囲気だな」と感じてくれたら、それは確かに届いている証拠。
BGMには、そんな“静かな感動”を生み出す力があると思います。
まとめ
BGM制作における“聴かせない音楽”とは、音を削ぎ落とすことではなく、空間や主役を引き立てるための音の在り方です。派手さよりも、余白の中にある美しさ。控えめな中にある情緒。
聴く人の想像力を広げる音。そんな音楽を、これからも丁寧に作っていきたいと思います。
